あらすじ
うかうか三十、ちょろちょろ四十
桜の花の季節のこと、土地の若殿は侍医とともに領地の村を散策していた。
村はずれでふたりは、美しく利発な「ちか」という名の娘と出会う。ちかは桜の大木の前にある農家にひとりで暮らしているという。殿はこの娘に一目ぼれし、彼女に結婚を申し込むのだが、この賢い娘はそんな玉の輿の申し出に浮かれる様子がない。幼い頃からの許婚である近隣の大工と結婚し、つつましいが幸せな生活を作っていくのだ、と言って若殿の申し出をきっぱり拒絶する。娘に振られてしまった若殿は落胆し、とぼとぼと城に戻る。城に戻る途中降ってきた大雨に若殿は濡れ、雷に打たれてしまう。
それから十年目の春の日。ちかは許婚の大工と結婚し、一人の娘をもうけていた。しかし大工の夫は結婚後間もなく病に倒れ、ずっと床に伏せている。長引き、回復のきざしの見えない病気のせいで、ちかの親身の世話にも関わらず、夫の心はひねくれ、ささくれ立っていた。
そこに頭巾をかぶった二人組の男がやってくる。彼らは殿様の侍医を勤めたこともある医者だと自称する。二人は無理やり夫を診察し、夫の病気はとっくに治っていて、すでに健康を取り戻している、と断言する。その言葉を聞き、夫は元気を取り戻す。頭巾の二人組が去ったあと、侍がやってきた。その侍が言うには、先ほどやってきた頭巾の男は殿様とその侍医で、二人は10年前から狂気に陥り、立ち寄ったさきの村で病人を見つけては「名医」を自称して、「その病人はすでに全快している」などとでたらめの診断し、いたずらに病人を喜ばせているのだ、と言う。真実を知った夫は絶望し、再びふさぎ込んでしまう。
それからさらに十年目の春の朝、若殿が突然正気を回復した。彼は自分が狂気だった期間の記憶をまったく失っていた。彼の一番新しい記憶は、20年前に村はずれの桜の大木の農家でちかという娘に会ったこと、その娘に恋したものの、振られてしまったことである。20年分年老いた侍医とともに彼はあの桜の木のもとにやってくる・・・・・。
現代版イソップ「約束・・・・」
ほんと、人間っておかしいもの。
これは、みんな私のことさ。
愚かで粗暴で純粋な「狼」は、はたしてこのIT時代に生き延びることができるだろうか。
奸智にたけた狐と、おろかで粗暴で純情な狼を中心に、老いた羊、若いムジナ、中年の月の輪熊が、物語を織り成していきます。
スピード社会、情報化社会に、生きる…生き延びる・・・「抱腹絶倒」の人形劇
|