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「兄おとうと」の感想文
 長時間の大作だったけれど
 チヤツプリンの映画「モダンタイムズ」 で使われた 「ティティーナ」という曲が、かえ歌となってこの芝居のオープニングとエンディングに登場した。懐かしくワクワクした。このミュージカル?のためのオリジナル曲に混じって「どんぐりころころ」やシューベルトの曲など耳なじみのメロディーがこの芝居をより身近にしていたのも嬉しい。
 また、井上ひさしらしいセリフの数々が随所に用意されていて思わすニツコリ。
 また、「三度のゴハンきちんと食べて火の用心、元気で生きよう きっとね」 といった兄作造のセリフも印象に残った。
 タイトルの 「兄おとうと」が 「兄弟」 でなく「おとうと」をひらがなにした何気ないお洒落な気配りも嬉しい。
 一人で何役もこなした小嶋さんと宮地さんという芸達者もこの芝居を充分楽しくさせていたし、元宝塚スターの剣幸さんや、毎度おなじみのベテラン辻萬長さんの健在ぶりも嬉かつた。
 ピアノの生演奏の素晴らしさもあって、2時間45分という長時間の大作だつたけれど、時間をまったく気にせず存分に楽しませてもらった。
 あえて、ミュージカルと呼ばず、音楽評伝劇としたことに何かしら新しさを感じながら帰途についた。
 外は寒かったが気持ちは暖かかった。
 巻雲   渡辺 宏 
 平成の世に浸透して欲しい
 大正デモクラシーの陰影がガラス窓に克明に写し出され、舞台措置の背景にまず、おどろきました。
 兄と弟に、思想の違いの中で社会世相を、また、その妻たちの賢明な女性像は、解放されていく時代の幕開けを告げるにふさわしく、重い内容がコミカルな歌声で舞台を朋るく演出されていました。
 少し飛躍して、井上ひさし原作は妻の立場を忘れた彼自身の体験した西舘好子へ理想と怒りの表明であったかとも・・・。加えて、子供や夫をないがしろにしたあちこちで離婚の噂を多く耳にする近辺の社会情勢に対する警鐘を鳴らして、家族崩壊、やがては国の崩壊へとつながるたいへん大きなテーマではないかと危惧してやまないのは、私一人ではないだろう。
 もう一度原点をみつめて、平成の世に浸透して欲しい。老齢の世代に入った私のとりこし苦労でしょうか。
 上演時間の長さに大変疲れました。
 紅いバラ 杉原 節子
 日本の妻の原点
 兄作造の思想は主権在民であり、貧困の民を救済する実行力を発揮した弟は高級官僚だけに国家主体をとおして力強く働きかけていった。
 二人とも強い信念を持ち、獅子奮迅の日々を送った。まさに大正の男の魅力ある生きざまである。
 又、その男二人を支えた妻の内助の功がすばらしかった。
 日本の妻の原点を強く感じた。
 アイランド 柴田 明典
 思想的違いを乗り越えて
 思想の違う兄弟が、兄弟としてどう付き合っていったのだろうと、芝居を観る前からとても楽しみにしていた。
 その舞台は、私の予想とは大分違って、とても明るく、面白く作られていて、期待通りにとても良かった。
 兄弟が共に過ごした幾日かに焦点を当てて描いているのはメリハリがきいて良かった。
 第一場面で、兄作造がヨーロッパ留学へ出かける前、東大教授の兄を駆け出しの政府役員の弟が、ずっと目標においていた話など、どこにでもあるようで面白く、次の場面で、兄作造が三年間のヨーロッパ留学を終えて帰国した所は、ヨーロッパの話はなにも出てこないが、民主主義の政治的研究をし、帰国してから、民主主義を政治に反映されなければいけないと、社会に訴えたことが想像出来るような舞台になっていて、そういう兄と、役人としての出世街道を歩む弟との間に起こる軋みが面白く描かれていた。
 最後には思想的違いを乗り越えて、聡明な姉妹である婦人の仲立ちで、兄弟の情愛を取り戻すという筋書きであったが、私には、テーマは、吉野作造という人間を描くところにあると思った。観終えて後、民主主義を訴えた人道主義者という一片の知識しかなかった吉野作造という人物が、つくづく偉大な人だなと感銘を受けたから。
 ほととぎす 窪田 順子 
 大変よかった
 
台本もしっかりしており、こまつ座の役者の方の芝居もしっかりしていて大変よかった。
  カトレア 植松 守
 とても誇らしく思えた 
 オープニングから出演者の勢いがあった。
 エネルギッシュなステージだった。
 痛快で歯切れの良いセリフまわしは、強く胸を打った。
 憲法についての作者井上ひさしのメッセージも強く伝わった。
 しかし、一国家の安寧に何が必要かを人々の心に問うならば、今のグローバルな時代に、世界の人々が如何に心かよわせるかという視点を忘れてはならないだろう。
 家庭の平和から、町の平和、国家の平和、世界の平和へと全てが繋がっていて、
  その基本は「三度のごはんきちんと食べて、火の用心、元気で生きよう。」に違いない。
 それはまぎれも無くひとつの真理であろうと思った。
 それにしても、今治の会員さんはすばらしい。
 カーテンコール後の退場の演出で、ピアノが鳴り続けたのだが、みなさん拍手を続けたために、主演の辻萬長さんを引っ張り出してしまった。
 ささいな事だがとても誇らしく思えた。
   匿名  男 

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