前進座ならではの舞台 本格的なドラマの舞台。久しぶりに観たと思いました。そして感動しました。 ドラマとは対立と、その人間の変化を描くといわれます。「お登勢」 は心理の変化だけではなく、そこに反映した社会、歴史も描きました。いわば総和としての人間の愛をみつめました。船山馨の歴史小説は格好の材料だったのです。 このお芝居では、二人の女性が対比して描かれました。志津とお登勢です。志津は徳島藩の直参、加納家の娘、両親に幕府はやがて倒れると説明する聡明、奔放な女性。新しい生き方を求めて傷つき、維新後は、高級官僚の妻となりました。しかし、結局志津の愛は、自分本位でした。利己主義といってよいでしょう。 これに対して、お登勢はひとすじに貫く愛でした。初恋の人への献身は、やがて自己犠牲をもかえりみない人間愛に高まってゆきました。演出者は丹念に描きました。格差はあって当然とする考え方を、まじめに告発するお登勢の愛を舞台に造りあげたと思います。 演出の今一つの大きな特徴は、人形浄瑠璃との結合です。浄瑠璃、三味にのって人形が踊る、そのたびに透明で重厚な情緒が劇場を包みました。「お登勢」 は日本的な愛を提起したのです。 山桜 木山 隆行 |
身を乗り出して引き込まれていた ♪「勝てば官軍〜負ければ賊軍〜」また、「錦の御旗〜」 とはやす幕間のおはやしを聴きながら、なぜか、先日他界された植木等さん、その三重県出身の人の好い笑顔が幕に浮かぶ。 そうしている内に、「江戸は東京〜」 とひとうなりあつて、舞台は文明開化の明治へと転換した。 最後のあいさつの際に、人形浄瑠璃の人形たちが、役者さんを出迎えるのに手を打っていたのが、何ともかわいらしかったし、人形浄瑠璃ってわかりにくいと思っていたのに、客席の皆、身を乗り出して引き込まれていた。 碧 マリーン |
幕が下りるまで引き込まれていました ジェームズ三木さんの脚本演出という事で、とても楽しみにしていました。三人遣いの人形があっという間にお登勢に変わり、自分の足で歩き出すと、思わず拍手をしてしまいました。 中村梅雀さん、南座の五重塔の時とはまた違った魅力を見せてくれました。 最後の幕が下りるまで引き込まれていました。 まだまだ 原田晴美 |
胸に迫りました 緞帳にスポットライトが当たる。力強い三味線の音、二体の人形。人形浄瑠璃での見事なオープニングに思わず引き込まれました。 さすがに前進座、役者さん達の声に張りがあり、ユーモアもたっぷりのとても楽しいお芝居でした。 エンディングはまた人形浄瑠璃で北海道に向かう二人の苦難がより胸に迫りました。演出も見事だったと思います。 また、楽しいお芝居を期待しています。 MJ |
話はわかりやすく、立居振舞いがきれいで、観やすかったです。 細かな所も手を抜かず、人形浄瑠璃もあってとても楽しめました。 交流会では、皆さんとても気さくな方で、親しみがわき、ますますファンになりました。ありがとうございました。 ハピネス 匿名 |
「役者やのう」 前進座のお芝居は、これまで何度も市民劇場で上演されてきたけれど、今回のは創立七十五周年記念作品として本当にふさわしい素晴らしいものだった。人形浄瑠璃を随所に折り混ぜ織りながらお芝居を進めていく手法はこれまでにない新しさを感じさせる。また、幕末の動乱期、池田屋騒動とか明治維新の事件等をセリフに折り込みながらさりげなくこの時代を印象づけたのは、さすがジェームズ三木の脚本と演出による成果である。素晴らしかった。 中村梅雀さんは映画「釣りバカ日誌シリーズ」 の軽妙な役柄からは想像できないくらいの役者魂を感じさせてこれまた素晴らしい。 また、お登勢役の浜名実貴さんの発声としぐさが、いかにも奉公人の女性らしさから少しずつ変化していく過程も細かく計算されつくした成果として成功していると思った。まさに 「役者やのう」 である。 お芝居が終わった時の場内の拍手がいつもの例会に比べて格段大きいように思われたし、「よかった、よかった」rよかったねエ!」 の声があちこちから聞こえてきた。 今日のこの舞台の余韻と感動は当分自分からはなれそうにない。 本当にいいものを見せていただいてありがとうございました。 巻雲 渡辺 |
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