実在する人物を描いた作品は数多い。映画界においても、今年のアカデミー賞で英国の元首相サッチャーさんをモデルにした「鉄の女の涙」で女優のメリル・ストリーブさんが主演女優賞に輝いたことは記憶に新しい。こうした実在する人物を描いたことでは今日の芝居も同じだと思う。 いろいろな登場人物や事件などが実名で登場するのだから芝居を創る側も見る方もそれなりの構えがいったことだろう。昭和二十四年の松川事件のことはあまりよく知らなかったけれど、当時の作家や知識人の方々の努力や世論などで被告人の全員無罪が確立したとか、大変な事件であったことに間違いない。 前半は淡々と芝居が進んでいくのだが、一見つかみどころのない部分が気になってこれからどのように展開していくのかが気になっていた。 珍しいラッパのついた蓄音機が昭和の雰囲気をよく表現していたし、とにかく出演された方々が本当によく食べていたのに感心した。また、伊藤孝雄さんは煙草を何本吸われたのだろうか。 さて、後半で松川事件の取調べの場面から主人公広津和郎らが事件解明のために努力する様子がうかがえてようやく納得したのは私だけだったろうか。なるほどと思った。 さて、出演の樫山文枝さんは相変わらずお若いまま。「おはなはん」の頃とちっとも変わってないのが本当に不思議。多分日頃の努力の賜なのだろう。 四月というのに台風のような風が吹く日だったけれど、舞台の場面転換を懸命にやっておられた多くの裏方の皆さんたちがいたからこそ、いいものが見られたことに感謝しつつ、心温かく中央公民館から帰宅出来ました。ありがとうございました。 巻雲 渡辺 宏 |
テレビで観ていた有名な方々を目の前で芝居(声を聞き・演技)を見ていられる。しかも家でテレビを観る時は「ながら族」で、家の用事やパソコン等しながらでしたので、ついそれに集中した時は、テレビなどそっちのけでしたから、中途半端にしか観ておらず、どうだったんだっけ、あれ観ようと思っていたのに・・など度々でした。 劇場で見るということは、その時間はそれを集中して観ていられる。そして、生で観られるということは、心にじかに響いてきて感動・悲哀もよく感じられて何か心が豊かになったような気がしました。 いつも忙しくしておりますので、これからこういう時間が持てる幸せが又ひとつ増え、楽しみにしたいと思っています。 今まで忙しいから入れないと思っていましたが、忙しいからこそ、こういう時間も必要なのだと思えて来ました。 まき 渡部茂香 |
友達から誘われ、今回初めて鑑賞した。 前の席だったので樫山文枝さんの表情、仕草、息遣いなどが間近に感じとることができた。 二十代を演じても違和感なく凄いと思いつつ、ずっと引きつけられた。 舞台のセットも小道具もすばやく動かし、場面が早替りするのに感心した。 日常とは違ったものを味わう事ができる生の舞台を観る楽しさを知った。 女性 T |
感謝の再入会 「車で送り迎えするから・・」と言うことで、私の再入会が実現しました。松山へ観に行っていた時からずっと観続けていました。体調が優れず、手術が不可欠となり退会しました。 「お元気でしたか?」で始まる私の再入会は、このあたりでは珍しい猛烈に風が吹きつける日でした。 ロビーでの受付のあたりは慌しい雰囲気、懐かしい顔、はじめてお目にかかる顔、当番サークル会員の「お願いします」の元気な声、私は動けないので腰掛けて眺めているだけでしたが、この様子は大好きです。これから何年ぶりかで、友人の好意により演劇の鑑賞ができる、と胸おどる気持ちでした。 柔らかい音楽が聞こえて来てしばらくし、紫色(これは今年の流行色?)の和服姿の樫山文枝さん、さすがに美しい。私はこの人の声、話しっぷりが大好きです。 ところが残念、声は聞こえてくるが言葉の内容が聞きとれない。聞こえない。どうしよう。 あの有名な松川事件がテーマ。家族関係、当時の時代背景、友人関係、警察での取調べ方(今も裁判員制度が取り沙汰されていますが・・)いろいろと考えさせられることの多い、どちらかと言えば内容の重い作品でした。 カーテンコールも小さくまとまった感じで好感度の高いものでした。 これからも鑑賞が続けられると思うと嬉しい。でもセリフの聞きとれないことは何らかの方法で改善していかねば、と思っています。 「いまばり市民劇場の会員数の拡大と益々の発展を切望しています。 CHUCHU 白石芳子 |
私が松川事件のことを知ったのは二十代の頃だった。松川裁判の支援活動を熱心にしている人がいて、話を聞いたり講演を聞いたりした。「冤罪」ということをはじめて知った。 その頃職場でちょっとした事件があり証人として警察に行った時、私の知らないことまで書いてある調書にサインをしろと言われた。こんなことは知らないというのに、犯人が自白したのだからそれで良いのだという。私はサインをしなかった。 こんな風にして冤罪事件はつくられてゆくのかと思ったことを芝居を観ながら思い出していた。 松川事件は広津和朗を中心とした多くの文芸人たちのペンの力が世論の関心を高め、長い裁判ののち全員無罪を勝ち取ることが出来たけれど、その後も冤罪事件が絶えることはない。 少しわかりにくいところもあったけれど、落ちついてじっくりいろんなことを考えさせられた民藝らしいお芝居だったように思った。 ゆうゆう 大澤ケイ子 |
『自分もできるかも』 「怠け者は一旦駆け出すと、それァ勢いが出ます」という、宇野浩二の言葉。怠け者の自分は、とても励まされた。「自分もいざというときは、勢い出るかな?」なんて… 広津和郎のいざというとき≠ヘ、親友宇野浩二と「真実は壁を通して」によってもたらされた。よろよろと立ち上がった広津は、長い裁判を戦い抜き、無実の被告全員に無罪を勝ち取り、散文精神≠実行してみせる。(GHQに操られた国家権力と、その手先となったマスコミや世間の誹謗中傷に、一人立ち向かい…。)戦中戦後ずっと鳴かず飛ばず♂Hを休めてきたとはいえ、あまりの大活躍…。でも私生活では、相変わらず間が抜けていて庶民的、ホッとさせてくれる。 これまで自分は、たいしたことしてこなかったけど、「今からでも間に合うのかな?チャレンジしてみようかな?」という気にさせてくれた。 元気をもらいました。本当にありがとう! 怠け者 |
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