佐賀県唐津市で専業農家を営んできた稲葉鉄人。このところ農業ばなれや不況の為か、農業を取り巻く状況は一向に良くならない。そんな中、鉄人は元医者でUターンして農業を目指している大河内老人と「身土不二」という言葉のルーツを探るのに夢中だ。 “しんどふじと”は、人間の体と土は表裏一体。つまり、その土地で育ったものを食べるのが一番いいと言う意味らしい。 鉄人の息子の大地は農業を継がなかったが、農業を諦めたわけではない。村を活性化しようと新しい観光業=グリーンツーリズムにとりくみ、その第一歩として「朝採れ野菜の産直」企業を興し、今や年商一億と絶好調。そんな息子の行動力に感心しながら、鉄人は賛同できない。百姓の志が微妙に違うと感じるからだ。 そこへ、コンビニ依存症のホームステイの農業高校生や大地の恋人がアメリカからやってきたりと稲葉家は大騒ぎ。さらに鉄人が百姓を続けられるかどうかの瀬戸際に追い込まれる事件が起きて、村は上を下への大さわぎ。
作者の高橋正圀と青年劇場といえば『遺産らぷそでぃ』『キッスだけでいいわ』『愛が聞こえます』で名演にはおなじみのゴールデンコンビ。作者得意の社会的な問題を温かな笑いに包み、これでもかとばかりに問題提起していく。そして青年劇場はたしかな演技力のアンサンブルでそれにこたえ、いつも私達を安心させてくれる。 『菜の花らぷそでぃ』では父子の農業を思うゆえの対立を軸に防腐剤、添加物、遺伝子組み替え作物の危険、流通問題の矛盾、コンビニ依存症の高校生を通しての食生活の貧しさ、国の農業政策への不信など。多くの問題を具体的に考えさせてくれる。しかも圧倒的な笑いの中で。
山下惣一の原作を高橋正圀が脚色したこの舞台は輸入農産物の安全性が問題視されている今こそ農業の再生の必要性と夢を訴えるきわめて今日的な舞台となっている。
全国で300回の上演を重ね、笑いと涙で客席を包んだ『遺産らぷそでぃ』から10年。農業を取り巻く環境は大きく変わった。食の安全を求めて再び「農」の時代はくるのか。
東京初演から新たに大幅な改訂を加え、「食」と「農」を問いかける高橋正圀氏の最新作!!
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